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「北京オリンピックを振り返って4 勝負の面白さ」

8月15日、ソフトボールの日本対アメリカ戦を取材に行きました。

悲願となっている金メダルを取るためには、アメリカの壁を越えなければ現実のものとはなりえません。ソフトボールがオリンピックの正式種目となったアトランタ大会からシドニー、アテネと全てアメリカが優勝。日本は4位、2位、3位と善戦すれども頂点に立てないままで終わっているのです。中でも口惜しかったのはシドニー大会で、予選リーグ戦7戦全勝でトップに立っていながら、予選4勝3敗で4位から這い上がってきたアメリカに決勝戦で敗れ金メダルを逃したことです。それだけに、今回の北京を最後にオリンピック種目から外れることになっているソフトボール関係者にとっては、何としても金メダルで締めくくりたいという思いが強く働いていたと思います。

今大会、ライバルの一つであるオーストラリアを初戦で接戦ながら下して順調なスタートを切った日本はここまで3戦負け無し。一方、アメリカも2勝0敗でこの日の試合に至りました。この大事なアメリカ戦に斎藤監督はどんな作戦で臨むのかとても興味がありました。ところがいざ先発メンバーが発表されると、ピッチャーはエースの上野ではなくベテラン江本だったのです。驚きました。と言うのも、未だ予選リーグ戦の途中ですからこの試合に勝つことだけが大事というわけではないのですが、大切なことは随所に日本は侮れないぞ、意外にしぶとい面を持っているぞ、といった印象を相手に与える必要があると私は考えていたからです。ということは、この試合に全力を投入して勝利を得ようというよりは、アメリカチームの力を量ることに狙いを絞ったのでしょうか。

さて、試合が始まってみると、江本投手のボールに威力が無く立ち上がりからホームランを交えメッタ打ちにされて1アウトも取れずに4点を奪われてマウンドを降りる始末。代わった染谷もアメリカの勢いを止めることができず2本のホームランを浴び5回コールド7-0で敗れてしまいました。

残念ながら日本の良さは全く見られないまま終わってしまいました。納得がいかないまま試合後の会見にも出席しました。そこで斎藤監督に「今日は勝ちに行こうとしたわけではなかったのですね。相手の戦力を見るという狙いだったのですね」と聞いたのですが、監督は「長丁場の戦いが続きますので、今日は継投策で臨みました。思い通りには行かないことが多いのでその辺りはご理解下さい」という含みのある答えを返してくれました。

しかし、どう考えても何ら見所のない今日の試合は今後にも良い影響を与えないだろうなととても心配になってしまいました。

その後、踏ん張った日本はアメリカ以外には強さを発揮して2位で予選を終え、1位のアメリカと決勝進出をかけて戦うことになりました。
(*ソフトボールはページ方式と呼ばれる独特の順位決定戦を行うことになっています。分かり易く言えば予選の1位と2位が試合を行い勝ったチームは決勝進出で銀メダル以上が確定。負けた方は、3位と4位のチームの戦いの勝者と対戦して、勝てば決勝戦に進むことができ、負ければ銅メダルが確定するというシステムになっています。)

さて20日、午前に行われたアメリカとの試合ですが、エース上野が良く投げ7回を終わって1-0のまま延長戦に、タイブレークの末9回に打たれて、4-1で涙を呑みました。日本は3位で予選を終え4位との対決を制したオーストラリアとこの日の夜決勝進出を賭けて試合をしなければなりません。既に日本に勝っているアメリカは翌日の決勝に臨むだけです。しかし圧倒的に不利な条件の中に身を置いた日本がここから快進撃を始めるようになるとは誰が想像したでしょうか。続くオーストラリア戦も延長12回まで戦う苦しい試合を乗り切って勝ち念願の決勝戦進出を決めました。上野投手はこの日の2試合で21イニングス(3試合分に相当)318球を投げ抜いたのでした。

そして翌日の決勝戦。上野投手は疲れているのは間違いなく、悪くすれば早い回でアメリカの強打線にノックアウトされるかもしれない、つまりアメリカ有利と多くの目には映っていたはずです。余裕を持って決勝戦に臨んだアメリカからしても、予選で粉砕した余り強さの見えなかった日本、その上にエース上野が疲れていて万全で無いとしたらもうこれはこちらのものだという思いが走っていたのではないでしょうか。

でも、勝負というのは本当に分からないものです。上野を中心に一丸となった日本チームには勝負の神様が付いたとしか言いようのない試合展開となりました。先取得点は日本、更に山田のホームランまで出てアメリカを圧倒。疲労の極にあるはずの上野は全く危なげのない冷静沈着な様子で、相手バッターの狙いを読みきって許した得点はブストス選手のホームランによる1点だけ。結局3-1で遂に夢にまで見た金メダルを日本にもたらしたのでした。総合力では劣っていてもチームが本当に一つになれば、その総合力で勝っているチームに勝つことがあるということを教えられました。

勿論、日本チームに最高の結束力を生み出したのは2日間で28イニングス(4試合分)413球を、肉体の疲労を乗り越えて最後まで明るい表情で楽しみながら投げているかのように
投げ続けた、上野投手その人です。そして他の選手たちも精神的なレベルは上野投手に負けないくらい高揚していて一丸となれたのだと感じられました。

予選リーグ戦でのアメリカ戦は私個人としては今でも失敗だったと考えていますが、でも日本の力量が全く読み取れず、結果としてはそれほど警戒を要するとは思えないとアメリカに思わせた点で結果的には良かったと言えるでしょう。それにしても、アメリカとは何度やっても簡単に日本が勝てるとは思えませんが、オリンピックの決勝戦でこういうことが起きてしまうのですから勝負はやってみなければ分からない。だから勝負は面白いのです。

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