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「ことばの重み」

ことばの重みについて考えさせられることが最近とみに多い様な気がします。とりわけ公人としての立場にある人は発言した一字一句が俎上に乗せられて議論の対象となるのは止むを得ません。それだけに発言するときには脇をしっかり固めてどの部分を責められても論破でき、それが相手の理解を得られるようでなくてはなりません。

記憶に新しいところでは麻生内閣で国交相に就任したばかりの中山成淋氏が「日本は単一民族」と事実誤認の発言を仕出かしたのをはじめ、「日教組の組織率が高いところは学力が低い」「日教組が諸悪の根源」などと発言して強い反発を招き結果的に辞任に追い込まれてしまいました。

彼自身は文科相時代全国各地の教育の現状をつぶさに見て歩き、日教組にさまざまな問題があり今日もその状況を引き摺っていることを確信していたのであのような発言に繋がったということのようですが、もし言うならば日教組のやってきたことの具体的にどの部分が問題であり何処がどのようにあるべきだったのか実証的に示さなくては話になりません。日教組の組織率の高さと学力の低さには相関関係はありそうに見えるが断定できるレベルではないと本人も認めているとのことですから、ならば具体的なデータを揃えてから議論すべきだったと思うのです。

麻生首相もかつて、日本の米が輸出されて韓国や中国に入ったとき関税などが上乗せされてキロ当たりで日本での価格より何倍ものばか高い価格になることを例にあげて、これはどちらが高いかはアルツハイマーの人でも分かると発言して、病気で苦しんでいる人たちや家族の気持ちを考えもしない配慮に欠ける発言だとして問題になったことがありました。これは同じ内容の話を別の場所でした際、この価格の違いは子供でも分かると言ってみたけど反応が鈍かったので病気の人たちでも分かると表現して受けを狙った結果だったというのですからちょっとお粗末だった感は否めません。また他にも、大雨の被害を受けた愛知県安城市や岡崎市の人たちを怒らせた「これが安城岡崎だったから良かったが名古屋だったらこの辺みんな洪水さ」という失言もありました。これらは善意に解釈すればできるだけ分かり易く砕いて話そうと思ってのことでしょうが、比喩表現はどのような立場にいる人が聞いても適切なものでないと誤解を招き自ら墓穴を掘ることになってしまうのです。

今年も213本のヒットを打ち8シーズン連続200安打以上を記録したシアトルマリナーズのイチロー選手にもハッとさせられる発言がありました。8年連続オールスターにファン投票で選出されるという快挙を成し遂げたとき、彼は言いました。「ファン投票で選出されるメンバーを見ていて、年々歳々メンバーが小粒になっていくなあと思っていたけど今年ほど地味な顔ぶれはない」と。確かにこれは彼の実感だったのでしょう。だがしかし、アメリカの野球ファンがこの発言に素直に肯くでしょうか。自分の実感であっても表現が余りダイレクト過ぎると反感を招く恐れが十分にあると私には思えます。何故ならアメリカの野球ファンは大リーグこそ最高のプレイヤーたちが揃っている場であり、どの時代でもオールスターファン選出メンバーは地味なメンバーではありえないと考えています。

またつい最近、ソフトバンクホークスの王貞治監督が今シーズン限りでユ二フォームを脱ぐとニュースで伝えられたとき、アメリカから日本人選手たちのコメントが紹介されました。その中で、イチロー選手が「王さんは選手として凄い記録を残しただけではなく、人間としての器の大きい本当に尊敬できる人です」という完璧なコメントを出していました。ところがそのあと更に発言が続き「野球界には尊敬できるような人はほとんどいませんがね」と語っていたのです。野球界の先輩方の中には、「え、それはどういうこと」と引っ掛かりを覚える人も多かったのではないでしょうか。これもイチロー選手の正直な気持ちだったのでしょうが、多くの人に抵抗を感じさせてしまっては損だと思います。

この場合、「野球界に心から尊敬できる人がそんなに沢山いらっしゃるわけではありませんが、王さんだけは別格です。選手としても破格の記録を残されたけれど、一人の人間としても器の大きい無条件で尊敬できる方ですね」といった言い方であれば誰にとっても違和感を覚えさせないコメントであったのにと思います。このように、良かれと思って発した発言が本人の意図通りには受け取られないことがあることをよく考えて慎重なコメントを出すような習慣をつけておくことがとても大切だと言えます。とりわけ公人や誰からも注目される存在の人たちにとっては。

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