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「第二の人生」

昨年末、松井秀喜選手の引退会見を寂しい思いを抱きながら見ました。大リーグ挑戦以来、何度かテレビ番組を通じてアメリカで松井選手を取材し、心から彼の活躍に声援を送り続けて来た私としては、出来ればもうひと花咲かせて貰いたいと思っていただけに瞬時に残念な思いになりました。でも彼の話を聞いているうちに、このタイミングで引き際を考えたことはとても良く理解でき、その決断は見事なほど潔いもので流石、松井選手だとも大いに納得しました。

これまで取材していて特に強く感じたのは、松井選手の人間性がアメリカの野球ファンにとても良く理解されていて、真摯で常にチームの勝利のために尽くす模範的な選手であることや、手首を骨折した時にはファンに向かって「申し訳ありませんでした」と謝罪し、野球ファンにもしっかり目を向けている数少ないプレーヤーの一人であることなど、どこを取っても非の打ちどころの無い日本人選手だと尊敬の念で見られているということでした。そのような話をたくさん聞いて、こんなにも嬉しく誇らしい思いになったことはありませんでした。

ところが各球団からオファーが無いとい現実は厳しいもので、最終的な決断をしたということです。松井選手にはこれまで素晴らしい取材体験をさせてもらったことにお礼を申し上げたいですし、日本人プレーヤーとしては今後二度とないかもしれないワールドシリーズのMVP受賞など凄い歴史を刻んできたのですから、胸を張って次の人生に力強いステップを踏んで頂きたいと思った次第です。

そんな思いになっているときに、旧知の友人でもあるノンフィクションライター遠藤宏一郎さんが上梓した「戦力外通告」という新著を手にしました。毎年大きな夢を抱いてプロ野球の世界に多くの才能ある若者達が入団してきますが、期待通りに成長して行く選手は残念ながらその中の一握りだけ。殆どの選手達が5、6年もたてば、球団としては「君とはもう契約しない」、つまり「戦力外通告」を受けて球界を去っていくのが現実です。ドラフトなどで10人が新入団をすれば、戦力とはみなされなくなった10人の選手たちは球団から去っていかなければならないのです。そうして去って行った選手はやがてファンからも忘れられ、スポットを浴びることもなくなってしまいます。

彼らにとっては第二の人生を切り開いていくことが課題になっていくのですが、遠藤さんはその中の7人の元プロ野球選手を徹底取材してさまざまな形で新たな人生に向かって邁進している彼らの姿を生き生きと描き上げています。タイガースの4番バッターを務めたこともある濱中治さん、ドカベンの愛称で親しまれた香川伸行さん、大リーグにも挑戦した抑え投手福盛和男さん、横浜のホームランバッターとして期待された古木克明さんなど、野球ファンの記憶に残る選手たち7人の生い立ちからプロ野球界に入るまで、そして入ってからの本当の有り様、更に戦力外通告を受けてからの生き方を見事に描いていて、彼ら一人一人の考え方、生き方がとても良く理解でき、「そうだ。そういう生き方もまた素晴らしいな」と感じました。

遠藤さん自身の人間の多様な生き方への理解と思いやりが溢れていて、読み終わって一人一人の元プロ野球人に拍手を送りたいという気持ちになりました。と同時に、自分も優しい人間になれたような気持になりました。好著ですね。

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