- 2010年8月16日 16:30
- 日々の思い
先々月の話で恐縮ですが、別所哲也さんが主催し国際的にも高い評価を受けている「ショートショートフィルムフェスティバル2010」の特別審査員を今年委嘱されました。
審査員は行定勲監督、監督も務める女優の桃井かおりさん、俳優の塩谷瞬さんと私の4人。驚くほどたくさんの応募作品を見て審査に臨みました。審査では色々な意見がぶつかり合ったものの議論を経て、国際部門とアジア部門は優秀作品を決めることができましたが、日本部門については全体に迫力不足で、やや型に嵌っていて新しいものを作り上げようという気迫が感じられないという厳しい評価で審査員の意見は一致しました。その結果、日本部門の優秀作品は該当なしという苦しい決断をせざるを得なかったのです。
今、日本全体が言いようのない停滞低迷状況に陥っていますが、創作意欲をもったものの集合体である映画創りの現場にもそういう空気が蔓延していることに驚かされました。何と最近は若者が留学したがらない、特に男子にその傾向が強いと聞きます。まあ、国を動かす政治家があの体たらくなので他は推して知るべしなのでしょうが、どうもこのままでは日本再浮上の可能性はもうないかもしれないと思えてきます。
そう考えていた時に(株)ドリームインキュベータ会長の堀紘一さんから新著「日本の成長戦略~こうすれば必ず甦る!」(PHP研究所)が送られてきました。堀さんの主張はいつも極めて明快です。
日本の新成長戦略は①コストではなく付加価値で勝負、②単品でなくセットで勝負、③大ロットではなく小ロットで勝負の三本柱が必要と説いています。良いもの必要なものにはお金を惜しまない人たちを相手に商売をすべし、誰に買ってもらえるのかを最初から意識してビジネスをすべしと主張します。
セットでというのはバラバラに売るのではなく、日本製炊飯器が中国人観光客に人気なのならば「コシヒカリ」「六甲のおいしい水」もセットにして売るべきだということなのです。①と②を推し進めて行くと必ず③の方向に進み、割高になっても小ロットの品質勝負で十分やっていけると堀さんは指摘しています。
また開業以来大きな事故を起こしていない新幹線はソフトの優秀さと相まって世界で堂々と勝負していけるものだそうです。他にも日本の果物などの高級農作物、更に高度の医療技術など世界に売れるものはたくさんあるぞという見方については全く同感です。
更に日本に一番向いている産業の一つとして「環境・省エネ産業」を育てることだとも強調しています。日本は多くの産業分野で高い水準にあり、幅広い技術を持っている日本こそこの分野のリーダーたりうる。清潔好きの日本が創り出したウォシュレットは誰もが認める優れもの。ウェットタオル、ウエットティッシュ、アルコールジェルも日本人の発明品で、この分野の仕事を受け持つのに日本人ほど向いている国民はいないと指摘しています。
また堀さんは重要な改革の柱として大胆な教育改革の断行を上げています。これは私も最も急ぐべき改革であると考えています。この15年くらいの間に日本人の学力は急激に低下し、現在も低落を続けています。長い間先人たちが読み書きそろばんと人間としての基本的な生き方だけはどんなことがあっても身につけなければならないものとしてしっかり教え込んできたのですが、「ゆとり教育」の名のもとに勉強をさせないいわゆる「狂育」が行われてきた結果、恐ろしいほどのレベルダウンが起きてしまいました。これを取り戻すのには20年くらいはかかるかも知れませんが、今すぐ立て直しにはいる必要があります。
堀さんの提言は英語の入試をTOEFLにすべし、から始まり、英語の離せない英語教師の排除など細かく何故それが必要なのかも指摘しています。また、高校卒業後一年間は、青年海外協力隊、自衛隊入隊、福祉活動のどれかを選択して社会勉強をすることの重要性にも触れています。この間給料は月10万円税金で支給。衣食住全般の面倒も国が見る。これを一年間努めて落第の評価が出なかった人にだけ大学受験資格が与えられるようにする。
大学は教養課程を辞め3年間専門課程の勉強をする。と、このようにすればどのコースを選んでも本人の意欲も含め、企業にとってもプラス面が多くなると言うのです。その他日本人がやるべきことやってはいけないことなど、とても示唆的なことに満ち満ちた提言の書になっています。これくらい立体的に物事を考えられる人はなかなかいないのに、ブレーンとして重用する政治家はいないのですかね。久々に元気の出る本を読んだ気がします。
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