- 2016年3月22日 17:14
- スポーツ
大相撲春場所九日目、琴奨菊と稀勢の里との一番は、立ち合い僅かに右に変わった稀勢の里が突き落としで琴奨菊を破りただ一人9戦全勝としました。
今場所きっての注目の一番だっただけにあっけない幕切れになったことで、稀勢の里がまともに琴奨菊の突進を受け止めるべきだったという向きもあるのですが、私はそう思いません。
昔、故鳴戸親方(隆の里)からこんなことを聞いたことがあります。現役時代、好敵手千代の富士とある場所で対戦したとき、その日千代の富士は一回目の仕切りから何時になく一気の出足を見せるぞと言わんばかりの雰囲気を醸し出していたそうです。そしてそれを見て隆の里は「これは逆に立ち合い変化するつもりではないか」と読んだというのです。そこで頭の中では変化する確率7割、普通通りの立ち合い3割と踏んで勝負に臨みました。実際には、最後の仕切りで立った瞬間、千代の富士が右に変化して読みがズバリ当たり、隆の里が一気に寄り切ったということでした。
勝負師はそのように相手の所作振る舞いまで読み解きながら勝負に臨むべきものです。昨日の一番は一回目の仕切りから琴奨菊の体勢がいつもより低く、思い切り立ち合いからエネルギーをぶつけてきそうだと感じとった稀勢の里がごく自然に体をずらしただけで、自らの頭脳を通して感じ取った勝負勘が勝ったのだと私は思います。見事な頭脳プレーでした。残り6日間を稀勢の里がどういう風に乗り切っていくのか、心配でもありますが楽しみでもあります。
- 次のエントリー: 「今年のマスターズ」
- 前のエントリー: 「久しぶりのコンサート」